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平成14年度税制改正のポイント
■大野・白根共同事務所
 税理士・CFP®認定者
 白根壽晴氏
税制改正:連結納税制度の創設が大きな目玉

●はじめに
 平成14年度税制改正は、構造改革を推進することを使命とする小泉政権のリーダーシップに期待がかかりましたが、日本の財政赤字と長期債務の拡大や、同時多発テロ以降の世界経済全体の不透明感の加速という環境下で、大幅な増税も減税もなく、小幅な改正にとどまっています。相続税、贈与税については、高齢者世代からその子供への資産の移転を通じて、預貯金偏重の個人金融資産の金融商品相互間のバランスの変動や、個人消費への刺激も考えられることから、基礎控除や特例の拡充など検討された経緯もあります。しかし、結局のところ大きな相続税・贈与税の減税は見送られ、また不良債権処理から期待された土地税制改革や、個人資産を金融市場へ促すような証券税制改革についても、抜本策は先送りされています。
 今年度の改正は、経済界からの6年越しの要望であった連結納税制度の創設が大きな目玉となり、個人の暮らしに大きな影響を与える改正項目は少数です。とはいえ老人マル優の段階的廃止に見られるような、将来の改革に向けた地ならしは進められているため、プランニングにおいての影響は少なからずあります。

住宅・土地関連税制

 不良債権処理の促進のためには、担保不動産の処分が避けられませんが、不動産市況が冷え切ったなかでの処分は、不良債権処理を躊躇させ、またその間に不良債権が拡大することになります。不動産の流動化を税制面から支援し、取引拡大を通じて市況の安定、回復につなげたいところですが、今回の改正では、住宅・土地関連税制について、大きな変更はありませんでした。

1. 住宅ローン減税の対象範囲の拡充


 住宅取得特別控除や住宅借入金等特別控除などは2〜3年ごとに改正されてきたため、居住開始年度によってその内容が異なり、わかりにくい仕組みとなっていますが、平成14年に入居する場合には、次のようになります。
(1)改正前の制度の概要
 金融機関等から借入を行って、一定の要件を満たす住宅を取得または増改築をした場合、毎年のローン残高のうち5000万円までの金額に一定の率を乗じた金額を、所得税から控除できる制度です。平成13年7月1日から平成15年12月31日に入居した場合には、10年間にわたり、1%の税額控除(合計最高500万円)を受けることができます。
(2)改正の内容
 適用対象となる増改築等の範囲に、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準、またはこれに準ずるものに適合する一定の修繕または模様替えが加えられます。

■住宅ローン減税の対象となる増改築要件(改正後)
  • 増築、改築、建築基準法に規定する大規模の修繕および模様替え
  • 家屋のうち居室、調理室、浴室等の床または壁の全部について行う修繕および模様替え
  • マンション等の床、階段、室内に面する壁等について行う修繕または模様替え
  • 耐震のための修繕または模様替え(追加)

・増築、改築、建築基準法に規定する大規模の修繕および模様替え
・家屋のうち居室、調理室、浴室等の床または壁の全部について行う修繕および模様替え
・マンション等の床、階段、室内に面する壁等について行う修繕または模様替え
・耐震のための修繕または模様替え(追加)

2. 給与所得者の住宅取得資金貸付の特例の延長

(1)改正の内容
 給与所得者等が、使用者から住宅取得資金の貸付を無利息または低金利で受けた場合の経済的利益について、所得税を非課税とする特例が、2年間(平成16年12月31日まで)延長されました。
 給与所得者等が、使用者から住宅取得資金貸付を受けた場合において、一定以上の金利を支払うこととしている場合には、これらの住宅取得資金貸付に関する経済的利益についての課税はありません。一定の金利とは、金利動向等を勘案した利率(基準利率)で、現在は1%とされています。また、基準利率以上での借入金は、住宅ローン控除の対象となる住宅借入金等に該当します。


3. 割増償却制度の改正
(1)改正の内容
1) 優良賃貸住宅等の割増償却の改正
 個人が優良賃貸住宅等を新築または取得し、賃貸の用に供した場合、減価償却費の計上にあたり、5年間にわたっての割増償却が認められています。この制度の適用対象住宅と割増償却率について、次のとおり見直しがされたうえで、適用期限が2年間(平成16年3月31日まで)延長されました。



改  正  前 改  正  後
適用
対象住宅
1.特定優良賃貸住宅
2.都心共同住宅
1) 高度利用地区の区域内の建築物
2) 地区計画の区域内の構築物
3) 再開発地区計画の区域内の構築物
1.特定優良賃貸住宅
2.都心共同住宅
  地区計画の区域内の
  構築物
割増
償却率
耐用年数35年未満のもの・・・32%
耐用年数35年以上のもの・・・44%
耐用年数35年未満のもの・・・30%
耐用年数35年以上のもの・・・40%

2) 特定再開発建築物等の割増償却の改正
 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の認定建築物の範囲に、一定の増改築等を追加したうえで、割増償却率が12%から10%に引き下げられました。

4. 固定資産税の減額措置等

(1)改正の内容
1) 新築住宅に係る固定資産税減額措置の延長
 下記の床面積の要件を満たす新築住宅については、3年間(地上3階以上の中高層耐火構築物については5年間)にわたって、120m2までの居住部分に相当する固定資産税額が、2分の1に減額されます。
 I. 家屋の総床面積の2分の1以上が、居住用であること
 II. 居住用部分の床面積が、50m2以上280m2以下(貸家住宅の場合は、35m2以上280m2以下)であること。
 適用期限は本年3月末までとなっていましたが、2年間(平成16年3月31日まで)延長されました。
2) 特定優良賃貸住宅の固定資産税減額措置の改正
 特定優良賃貸住宅を新築した場合、5年間にわたって固定資産税の減額措置を受けることができますが、今般の改正で減額割合が3分の2から5分の3に縮小されたうえで、適用期限が2年間(平成16年3月31日まで)延長されました。
 なお特定優良賃貸住宅とは、都道府県知事の認定を受けた賃貸住宅で、住宅戸数、床面積、構造等のほか、敷地面積300m2以上、耐火構築物の場合地上3階以上等といった一定要件を満たす住宅をいいます。
3) 固定資産税における情報開示の推進
 これまで、第三者による固定資産税課税台帳の縦覧および閲覧は、本人の委任状持参等といった一定の場合を除き、開示されていませんでした。
 平成15年4月以降、縦覧制度を改正し、納税者が自己と他の固定資産評価額を比較できるよう、新たに縦覧制度が整備されます。また、固定資産税課税台帳の閲覧制度および固定資産の評価額等の証明制度が創設されるとともに、借地人・借家人等が、対象資産の固定資産税額を閲覧できる措置が講じられます。

5. 登録免許税の軽減措置

(1)制度の内容
 都市再生を促す観点から、一定の要件を満たす中高層耐火構築物およびその敷地を一体として取得した場合、所有権移転登記に対する登録免許税が1000分の25(本則は1000分の50)に軽減されます。適用期限は、平成14年4月1日から平成16年3月31日までの2年間の時限措置となっています。


相続税制

 平成13年は、米国の所得税の大減税と遺産税の10年間かけた段階的廃止の決定に驚かされました。日本の最高税率70%にも及ぶ相続税・贈与税については、特に中小企業経営者等に事業承継上重税感が大きく、法人税改正と併せた中小企業支援の見地から、抜本的な改正が望まれていましたが、平成14年度における改正点は、次の点にとどまっています。

1. 取引相場のない株式の相続税評価の減額措置

 事業承継に係る税制のうち土地については、昨年度の税制改正で小規模宅地等の特例の適用対象面積が拡大されています。しかし、自社株については、これまで軽減措置が実施されたことはなく、今回初めての減税制度実施になりました。
(1)制度の内容
 平成14年1月1日以後に、取引相場のない株式等を相続し、次の要件を満たす場合、発行済み株式総数の3分の1以下について、3億円を限度として、相続税の課税価格が10%減額されます。
 1) 当該会社の発行済み株式等の総額(相続税評価額ベース)が、10億円未満であること。
 2) 被相続人等が、当該会社の発行済み株式等の総数の50%以上を有していること。 
 3) 相続人が、当該株式を引き続き所有すること。
 4) 相続人が、役員として会社の経営に従事していたこと。
 この特例を選択する場合、小規模宅地等の特例は利用できません。なお、取引相場のない株式の物納要件については、今後明確化等が図られる予定です。

ここがポイント  小規模宅地等の特例との併用はできないので、言うまでもなくどちらが有利かを検討する必要があります。この減額措置では、3億円を限度として10%減額することとしていますので、軽減額は最大で3000万円になります。都心部などに相続税評価額の高い土地等を有する人の場合は、小規模宅地等の特例を選択したほうが有利となるケースが多いと思われます。

2. 山林に係る相続税等の見直し

(1)制度の内容
 平成14年1月1日以後に、相続または遺贈により取得した一定の山林については、相続税の課税価格を5%減額する措置が講じられます。対象となる山林は、被相続人が森林施業計画を定めており、かつ相続人が引き続き森林施業計画に適合した施業を継続していた場合の、当該区域内に存する山林(立木および林地)で、対象面積の制限はありません。なお、この特例を選択適用した場合、小規模宅地等の特例は利用できません。 
 また、延納等の利子税の割合、要件も緩和されています。
FPジャーナル4月号より不動産関連項目抜粋
2002-04-01.MON

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