都市部を中心に、低迷が続いていた地価の底打ち感が鮮明になってきた。アベノミクスによる景況感の改善に、来年4月に予定される消費増税や金利の先高感を懸念した駆け込み需要が加わり、不動産・住宅購入熱が高まった形だ。今後は7年後の東京五輪開催に向けた都市整備なども期待され、「地価の上昇基調は当面、続く」(アナリスト)との見方が強まっている。
東京・湾岸エリア。2008年のリーマン・ショック後、地価の大幅な下落に見舞われたが、現在は一転、大型マンションの建設ラッシュに沸いている。開発業者は「震災による津波被害への不安もあり、一時は敬遠されてきたが、都心に近い立地条件の良さが見直され、人気が再燃している」と説明する。
これに「五輪特需」が加わった。選手村建設予定地に隣接するタワーマンション「ザ・パークハウス晴海タワーズ」では、五輪開催が決定した8日早朝からインターネットや電話でモデルルームの見学希望が殺到。9月の3連休には約200組が足を運んだ。
「新居が欲しいと考えていたが、五輪開催決定で、購入の決意が固まった」。妻と5歳の息子を連れて訪れた都内の会社員(33)は「五輪が近づけば商業施設などの整備も進み、湾岸地区の居住環境はさらに良くなる」と期待する。このマンションの中心価格帯は3LDKで6000万円台だが、9割以上が成約済みだという。
東京、名古屋、大阪の3大都市圏の住宅地は前年比0.1%下落とプラス転換が視野に入った。地方圏の下落率は2.5%と依然厳しい冷え込みが続くが、仙台市で2.7%、福岡市で0.7%それぞれ上昇するなど、中核都市では下げ止まりの動きも広がる。
企業業績の改善を背景に、商業地も持ち直しの動きを強めている。3大都市圏では前年比0.6%の上昇となり、08年以来5年ぶりにプラス転換。1420ある調査地点の48%で地価が上昇した。
賃貸オフィス仲介業の三鬼商事によると、東京都心に位置する千代田区では、8月末に38階建ての「大手町タワー」が一部地下工事を残し完成するなど、この1年で高層のオフィスビル8棟がオープンした。一方、同区の空室率は昨年9月の7.80%から、今年8月は6.44%に低下した。オフィス需要が旺盛な状況が続いており、大手不動産会社幹部は「都心のビルは、空きが出ればすぐに埋まる状態」と説明する。