地方波及、限定的 「過疎下落、今後も」 観光客ハワイ超え、沖縄上昇に貢献
2018年(1月1日時点)の路線価は、全国の平均変動率が前年比0・7%のプラスとなり、16年に8年ぶりにプラスに転じて以来3年連続で上昇し、地価の回復基調を裏付けた。アベノミクスによる大規模金融緩和や訪日旅行者の増加が大都市圏を中心にホテルや商業施設の需要を喚起し、上昇に結びついた。しかし、人口減少が続く地方圏への波及効果は限定的で、大都市と地方の格差は解消していない。
全国の平均変動率が3年連続で上昇したのは、リーマン・ショック前で「戦後最長の景気回復」が続いた06~08年以来となる。上昇率は16年0・2%、17年0・4%、18年0・7%と緩やかながらも、ほぼ倍増している。不動産協会の菰田正信理事長(三井不動産社長)は2日、「緩やかな経済の回復が続き、デフレ脱却の道筋を確実に進んでいることが、地価に反映されたと評価している」とコメントした。
都道府県別では観光需要で5・0%のプラスとなった沖縄県をはじめ18都道府県が上昇したが、東北・北陸・四国など地方圏の29県がマイナスとなった。
沖縄県への17年の観光客数は前年比9%増の939万人と、ハワイへの観光客数(938万人)を初めて上回っており、ホテルや商業施設の建設需要の高まりが、地価の上昇に結びついた。
地価は3大都市圏などで上昇し、地方圏でマイナスが続く二極化の構図は変わらないが、駅前再開発などでマンションやテナント需要が堅調な滋賀、佐賀、長崎、熊本の4県がマイナスから上昇に転じた。横ばいだった石川県は北陸新幹線開業に伴うホテル建設ラッシュが一段落してマイナスとなったものの、下落した29県のうち、18県で下落幅が縮小するなど、地方圏でも地価は下げ止まりつつある。
不動産サービス大手のCBREは「ここ数年は金融緩和だけでなく、オフィスや商業施設の需要が高まり、資産価値上昇の流れが地方都市にも拡大している」という。三井住友トラスト基礎研究所の北村邦夫投資調査第1部長は「今回の地価上昇は金融緩和が起こしたといえる。超低金利で運用難の機関投資家の資金が不動産に流入している。しかし全国すべての地価が上昇することにはならない。過疎化、衰退している都市や地域の地価は今後も下落するだろう」と見る。
全国の最高路線価は今年も東京・銀座の鳩居堂前で1平方メートル当たり4432万円。バブル期の最高値を更新した17年に続き、2年連続で史上最高値を更新した。上昇率は17年の26・0%に対して18年は9・9%に縮小したが、2年で4割近くも上昇したことになる。
バブル期の最高値を超えたのは、今回も東京・銀座の鳩居堂前だけ。東京五輪を前に再開発が進む東京都心ではバブル再来を懸念する声もあるが、米国系の総合不動産サービス会社、ジョーンズラングラサール(JLL)は「バブル期のように値上がり目的で買いが買いを呼ぶ現象とはなっていない。海外を含む投資家が不動産の収益を分析し、価格が形成されるので、決して投機的な動きではない」と話している。