千葉県が19日発表した2019年の基準地価(7月1日時点)は全用途平均で前年に比べて0.7%上がり、5年連続で上昇した。人口流入が続く県北西部を中心にマンションやホテル建設が相次ぎ、土地需要が増加。商業地はリーマン・ショック直前の水準を上回った。高速道路の整備で物流施設や工場の進出意欲が高まり、工業地も一段と値上がりした。
県内で地価が上昇したのは314地点と前年に比べて13地点増えた。下落地点は11地点少ない265地点で、2年連続で上昇の方が多かった。横ばいは236地点だった。
値上がりが目立つのは商業地だ。県内の平均上昇率は2.8%で、前年の上昇率(1.6%)を大きく上回った。商業地の平均価格は1平方メートルあたり24万6000円で、リーマン・ショック直前の08年(23万1400円)を超えた。
県内の商業地で上昇率が最も高かったのは、市川市八幡2丁目の22.5%だった。JR本八幡駅周辺はタワーマンションの建設が相次いでいるほか、駅北口で新たな再開発計画も始動。本八幡駅周辺は所得水準が高い世帯が多く、開発の進展で「地域の購買力が一段と高まる」(地価調査を担当した不動産鑑定士の佐藤元彦氏)との期待が地価を押し上げた。
東京ディズニーリゾート(TDR)に近い浦安市美浜1丁目の上昇率も20%を超えた。国内外の観光客をターゲットにしたホテルの新設や増床が相次ぎ、土地の期待収益率が高まった。JR船橋市周辺は人口増を背景に集客力が高まる一方、オフィスビルの新規供給が少なく「駅前の一部の物件では募集するとテナント候補が殺到する」(米系不動産大手のCBRE)ほど需給が逼迫している。
住宅地の平均上昇率は0.3%と前年(0.1%)を上回った。最も上昇率が高かったのはつくばエクスプレス(TX)沿線に位置する柏市大室の11.5%。前年は1.0%下落したが、近隣で区画整理や都市計画道路の整備が進み、今後の宅地開発に対する期待感が一気に高まった。東京圏全体でも上昇率トップだった。東京湾アクアラインの出入り口に近く、東京都や神奈川県への通勤・通学者の多い木更津市、君津市も上昇率の上位に入った。
商業地、住宅地とも値上がり地点の多くが東京湾岸に集中するなか、太平洋に面した外房エリアで上昇が目立つのは一宮町。五輪のサーフィン競技会場に選ばれて以来、移住者向けの住宅や商業施設の新設が相次ぐ。町内の商業地の平均上昇率は10.3%、住宅地は2.6%といずれも県内市町村で3位だった