「2003年問題」ビル需給に影
地価に一部底入れも見え始めた東京都心部で、今後の行方を不透明にしているのは、オフィスの供給ラッシュだ。特に2003年の新規供給面積は1990年代以降のピークになる見通し。供給過多で賃料の下げ圧力が強まれば、地価の一段の下落を招く可能性もある。
2003年の完成に向けて大規模なオフィスビルの建設が都内で進んでいる。延べ床面積が10万平方メートルを超えるプロジェクトだけでも六本木、品川、汐留、丸の内と4地区にある。森ビルの調査では、2003年に東京23区内で新規供給されるオフィス床面積は200万平方メートルで、最近のピークだった94年の183万平方メートルを上回る見通しだ。
不動産業界では早くから「2003年問題」として指摘されてきたが、95%を超えるオフィスビル稼働率を維持していることもあって、「大量供給分も市場で10分吸収できる」と強気な経営者が多かった。
ところが、最近になって雲行きが変わり出した。
「諸般の事情で拠点を閉鎖することになりました」――。横浜市の大型オフィスビル「横浜ビジネスパーク(YBP)」。米パソコン大手ゲートウェイの日本法人オフィスに8月末、こんな紙がはり出された。
世界的なパソコン需要の停滞を受け、ゲートウェイはアジア・太平洋市場からの全面撤退を決断した。日本でも約700人の全社員を解雇。同社が使用する約5700平方メートルのオフィスは一転して空室になり、YBPを所有する野村不動産は代わりのテナント探しに駆け回っている。
不動産大手の幹部は「今年初めから変調を感じている」と打ち明ける。昨年来の米国でのIT(情報技術)景気失速を受け、オフィス増床を予定していたIT企業や外資系金融機関の間で当初計画を見直す動きも相次いでいるという。これまでは現在使用中のオフィスの縮小・移転までには至っていなかったが、ゲートウェイの例は景気後退が既存オフィスにも影響を及ぼし始めたことを示した格好だ。
オフィス仲介の生駒データサービスシステム(東京・港)によると、東京23区内のオフィスの平均稼働率は6月末で96.3%。前回調査(3月末)より0.1ポイント下落した。