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J-REITの見方 

 JREIT市場がさえない動きとなっています。価格や利回りにかなりの差異があります。どのように銘柄を見ればよいのか、二木憲一不動産鑑定士がそのヒントを示しています。

 サブプライム問題が発生じたときは、楽観論が多く、ここまで深く、長期にわたることを予測した人は少なかったように思います。アメリカの金融機関、欧州や日本を初めとする金融機関の債券下落による経営への影響、アメリカの住宅価格の下落等、問題は尽きません。日本にも大きな影響を与えています。特にJREIT市場に投資していた外国資本が、サブプライム対策で資金を引き上げたことが今回の市場低迷のきっかけの一つとなっています。

 JREITは東京証券取引所等に上場されています。まだ十分に認知されていないということがありますが、株式と同じです。売買は、証券会社を通じて行うことができます。ただ、有価証券ですから、不動産の分野ではありますが、不動産会社では買うことができません。

 現在、東京証券取引所:41(うち1銘柄は福岡証券取引所にも上場)、JASDAQ1の銘柄が上場されています(表1参照)。どのようにこれらの銘柄をみていくかを考えていきましょう。

1.デットと工クイティ

 不動産の証券化が始まり、「カタカナ」が氾濫するようになりました。デット(debt:借入、負債)とエクイテイ(equity:出資、資本)はその代表的なものです。不動産証券化用語としての意味では、デット=債権=金(貸金)に対する投資、エクイティ=実物不動産に対する投資と理解しています。

 デットの証券化の代表的なものに、住宅ローン債権があります。住宅金融支援機構が行っている、銀行の住宅ローンの債権化による流動化です。次にエクイティです。賃貸ビルや賃貸マンションを所有することは、まさに実物不動産の所有になります。会社や個人がこれらの不動産を所有するケースが今までは一般的でしたが、新たな器(うつわ)=ヴイークルとして登場したのがJREITです。

2.利回り

 ここで最初にみるのは利回りです(725日時点)。利回りが一番低い日本ビルファンド投資法人が3.23%、逆に一番高いのがエルシーピー投資法人で、10.99%です。この場合の予想利回りは「(当期予想分配金+次期予想分配金)/価格」で記載されています。ジャンクボンドでもないのに信じられない利回りです。いかに人気が離散しているかわかります。

 JREITが初めて上場されたのは20019月ですが、上場直後にニューヨークの世界貿易センターが消失し(911)、タイミングが最悪でした。JREと日本ビルファンド投資法人(NBF)は、その後しばらく低迷していました。もちろんJREITの知名度が低く、人気がなかったこともあります。

 もともとJREIT=不動産投資信託はミドルリスク・ミドルリターンの投資商品として誕生し、あくまで値段の変動ではなく配当によるインカムゲイン狙いでした。その後、上場が増加し、認知度が高まり、地方銀行や青い目の投資家により、ハイリスク・ハイリターンのキャピタルゲイン狙いの投資商品に変質してしまいました。

 そしてサブプライム問題をきっかけとする人気離散です。見方によっては、現在の低迷は本来の投資商品に戻るよき機会かもしれません。

3.運用資産

 JREITが投資し保有する不動産は賃貸収入がある収益物件です。その投資対象はというと、大きく分けると、オフィスビルと集合住宅です。利回りが低い銘柄はオフィスビルが投資対象となっています。利回りが高い銘柄は集合住宅が投資対象です。これは人気の差を象徴しています。

 オフィスは、立地の良さが高い賃料や低い空室率につながり安定性が高いことが人気の理由かもしれません。 一方、集合住宅は賃料が低位にあり、借主の移動が多く、安定感を欠く印象を持たれているのでしょうか。

 投資対象として、このほかにも商業施設、ホテル、シニア住宅、インフラ施設といったものが組み込まれています。大きく分けると、単一用途の施設を組み込んだものと、複合した用途の建物を組み込んだものとに分けることができます。

4 借入金

 投資法人は、投資家の出資と借入金で収益不動産を購入します。低金利時代には積極運用が良いのですが現在のサフプライム問題に端を発する金融機関の収益悪化状況では借入金は問題となります。ある投資法人は、国内銀行の融資がうまくつかず、外資から借り換えたが、従来の借入金利より1%程度上昇し、新しい期では投資口1口当たりの分配金は当初予想を約15%下回る見通しと報じられています。 投資法人は「短期借入金(1年目処)」「長期借入金(2年以上)」「投資法人債(株式会社の社債に相当)」によって資金を手当てしています。短期のものは、変動金利で、借り換えて条件が悪くなる恐れがあります。

長期もの(3年程度)は、固定金利が多く、金利変動リスクが少ないため、金利上昇場面では、長期借入金や投資法人債が多いほうがリスクは少ないと考えられます。

5 公募による資金拡大

 07年後半から、不動産市況は下落が始まりました。不動産ファンド会社でも、買い控えか始まりました。JREIT市場が下落し、不動産価格も下落する状況下は、不動産の買い場でもあるわけです。08年に入り投資口の追加発行をした会社か4社あります。第三者割当による増資をした会社が2社あります。 金融機関からの借入返済に充当することも考えられますが、新規取得の資金手当てと考えるのが妥当でしょう。なぜなら、増資して収益不動産を購入しないと一投資口当たりの収益は薄くなり、配当できなくなります。となればそのJREIT銘柄の投資口の価格が安くなる恐れがあるからです。「内部留保で新規投資案件が購入できないか」と考える方がいらっしゃるでしょう。JREITは、収益の90%を配当に当てることによって、法人税がかかりません。これが分配金(配当金)が多い理由です。新規投資をするには、@手持ち物件を売って新規投資を行う、A金融機関等から借入を起こす、B投資口の追加発行、C第三者割当の増資、しかありません。成長路線を考えた場合には、何らかの方法で資金手当てをする必要があります。投資口の追加発行は、利益の希釈化と捉えるのでてはなく、成長路線の証しと考えてはいかがでしょうか。

6 スポンサー企業

 最後に、投資法人とスポンサー企業の関係に触れましょう。日本のJREITは、本場アメリカと違い、巧みに日本化しているのではないかと思っています。 アメリカでは、REITに組み込まれている不動産や運用で評価されるのに対し、日本では投資法人のバックにあるスポンサー企業の「ブランド」に負っているところがあるのではないかというのが個人的見解です。

 JREITは、投資法人という器=ヴイークルに収益不動産を持たせます。あくまでヴイークルで、ペーパーカンパニーのようなもので「倒産隔離」を図りいろいろな業務はアウトソーシングにより進めていきます。

 最初に上場されたNBFJREはそれぞれ三井不動産と三菱地所を核のスポンサー企業としています。42番目の産業ファンド投資法人は、三菱商事とUBS A.G.の2社がスポンサー企業です。本来は保有している不動産やその収益率で価格が形成されるはずですが、どうもスポンサー企業のブランドも影響しているような気がします。

 最近では、投資法人のスポンサー企業の変更も見られます。 今年に入って、フロンティア不動産投資法人のスポンサーである日本たばこ産業が運用会社の全株式を三井不動産へ売却し、ジャパン・シングルレジデンス投資法人のスポンサーがアパマンショップグループヘ変更したというニュースが流れました。 MAと言ってもよいのでしょう。三井不動産かスポンサーとなる投資法人は3つ目となります。新しく立ち上げるより、手っ取り早いのでしょう。投資家にとっても積極的な運用が期待できる面があります。今後は、資金調達の面からスポンサー企業の影響力を期待する場面もあるかも知れません。となると今後も投資法人のスポンサーが変わることは考えられ、目を離せない状況が続くと思われます。

公共建物株式会社都市再開発企画推進部部長    二木憲一氏 不動産フォーラム21より

表1 上場J-REITの概要(上場順・7月25日時点)
全REIT平均予想利回り 5.15%  全REIT時価総額合計 3,931,808百万円 

投資法人名

7月25日株価 予想利回り 時価総額(百万円) 運用資産 スポンサー企業群
1 日本ビルファンド投資法人 1,280,000 3.23% 693,760 オフィスビル特化型 三井不動産・住友生命保険他
2 ジャパンリアルエステイト投資法人 1,122,000 3.29% 497,046 オフィスビル特化型 三菱地所、東京海上日勤火災保険ほか
3 日本リテールファンド投資法人 558,000 5.51% 215,668 商業施設特化型

三菱商事、UBS A.G.

4 オリックス不動産投資法人 589,000 4.99% 148,205 総合型(オフィスビル中心) オリックス、大京
5 日本プライムリアルティ投資法人 277,000 5.16% 173,125 複合型(オフィス+都市型商業施設) 東京建物、明治安田生命保険ほか
6 プレミア投資法人 458,000 7.21% 60,181 複合型(オフィス+住居)

ケン・コーポレーション、総合地所 ほか

7 東急リアル・エステート投資法人 834,000 3.75% 141,263 複合型(オフィス+商業施設) 東京急行電鉄、東急不動産
8 グローバル・ワン不動産投資法人 1,173,000 3.51% 113,664 オフィスビル特化型

明治安田生命保険、キャップマークジャパン ほか

9 野村不動産オフィスファンド投資法人 803,000 4.07% 245,014 オフィスビル特化型 野村不動産ホールディングス
10 ユナイテッド・アーバン投資法人 456,000 7.36% 91,793 総合型(オフィス・住居・商業施設・ホテル) 丸紅、クレディ・スイス・プリンシパル・インベストメンツ・リミテッド東京支店、極東証券
11 森トラスト総合リート投資法人 1,000,000 3.99% 160,000 総合型(オフィスビル中心)

森トラスト、パルコ ほか

12 日本レジデンシャル投資法人 302,000 7.95% 74,640 住居特化型

パシフイツクマネジメント、三菱東京UFJ銀行、小田急不動産

13 東京グロースリート投資法人 185,000 9.73% 9,971 総合型(住居中心+オフィス等)

バレックス

14 フロンティア不動産投資法人 629,000 5.69% 100,640 商業施設特化型

三井不動産(JT系)

15 ニューシティ・レジデンス投資法人 193,000 10.41% 35,139 住居特化型

CBリチヤード工リス・インベスターズ、ニューシティ・コーポレーション ほか

16 クレッシェンド投資法人 246,000 8.28% 26,729 複合型(オフィス+住居)

韓充宏、平和不動産 ほか

17 日本ロジスティクスファンド投資法人 652,000 4.49% 79,740 物流施設特化型 三井物産、中央三井信託銀行グループ、ケネディクス
18 福岡リート投資法人 551,000 6.39% 58,985 総合型(商業施設中心)

福岡地所、九州電力 ほか

19 プロスペクト・レジデンシャル投資法人 267,600 6.76% 20,097 住居特化型 プロスヘクト
20 ジャパン・シングルレジデンス投資法人 241,000 7.18% 13,523 複合型(住居+ホテル等) インボイスRM、リーマン・プラザーズ・IJI、ダヴインチ・アドバイザーズ
21 ケネディクス不動産投資法人 562,000 5.34% 112,400 総合型(オフィスビル中心)

ケネディクス

22 ジョイント・リート投資法人 252,800 8.70% 26,461 総合型(住居+商業施設中心)

ジョイント・コーポレーション

23 ラサール ジャパン投資法人 190,000 10.00% 22,895 総合型(オフィス+商業施設中心)

ラサールインベストメントマネージメント

24 FCレジデンシャル投資法人 414,000 10.38% 13,538 総合型(住居+ホテル・その他)

ファンドクリエーション

25 DAオフィス投資法人 425,000 6.70% 146,160 オフィスビル特化型

ダヴインチ・アドバイザーズ

26 阪急リート投資法人 471,000 6.37% 40,223 総合型(商業施設中心) 阪電鉄急
27 アドバンス・レジデンス投資法人 314,000 8.66% 23,864 住居特化型 伊藤忠商事、伊藤忠都市開発ほか
28 スターツプロシード投資法人 91,500 10.77% 9,880 総合型(住居中心)

スターツアメニティー、スターツコーポレーション

29 エルシーピー投資法人 202,000 10.99% 18,544 総合型(住居中心)

ザ・エルシーピー・グループ・エルピー、極東証券

30 ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人 284,600 8.13% 26,098 ホテル特化型

MLQlnvestorsLP.、ゴールドマン・サックス子会社

31 トップリート投資法人 401,000 6.26% 62,155 総合型(オフィス+商業+住居)

住友信託銀行、新日鉄都市開発、王子不動産

32 クリード・オフィス投資法人 182,000 8.79% 24,279 複合型(オフィスビル中心+商業施設)

クリードほか

33 ビ・ライフ投資法人 305,000 8.07% 15,024 複合型(住居+商業施設中心)

モリモト、キャピタランド・ジャパン、大和ハウス工業 ほか

34 日本ホテルファンド投資法人 305,000 7.87% 12,871 ホテル特化型 クリエーティブ・リノベーション・グループ・ジャパン(カナダを拠点としたホテルコンサルティング会社)、共立メンテナンス ほか
35 リプラス・レジデンシャル投資法人 188,000 10.98% 18,326 住居特化型 リプラス、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行
36 ジャパンエクセレント投資法人 525,000 7.43% 81,139 総合型(オフィスビル中心)

興和不動産、第一生命保険 ほか

37 日本アコモデーションファンド投資法人 521,000 5.52% 59,123 住居特化型 三井不動産
38 MIDリート投資法人 306,000 8.14% 56,189 総合型(オフィスビル中心)

MID都市開発、アメリカ年金運用大手会社の日本法人(エートス・ジャパン社)の関連企業

39 日本コマーシャル投資法人 278,000 9.46% 71,557 複合型(オフィスビル+商業施設)

パシフィックマネジメント

40 森ヒルズリート投資法人 493,000 5.72% 63,991 総合型(オフィス中心+商業施設+住居) 森ビル
41 野村不動産レジデンシャル投資法人 420,000 6.63% 40,641 住居特化型

野村不動産ホールディングス

42 産業ファンド投資法人 345,000 6.40% 27,267 複合型(物流施設+インフラ施設) 三菱商事、UBS A.G.


表2 J-REITの時価総額の推移
J-REIT時価総額の推移とTOPIX時価総額に対する比率(億円, %)  2001-09-10〜2008-07-24 J-REIT時価総額の推移と東証1部不動産業時価総額に対する比率(億円, %)2001-09-10〜2008-07-24
 地価の下落がつづいていた7年前「不動産が値上がりする!」という刺激的なタイトルの本を山本清治氏が出版された。その中で「不動産投信」(J-REIT)が不動産市況の救世主になると主張され、次のように予言されていた。(当社 Topics 2001-06-20.WED で紹介)

 「私は不動産投信の将来の市場のスケールを、次のように強気に想定している。

第一段階は、5年後に5兆円。そのとき、不動産投信は主要都市の主要な不動産の価格形成に、十分な影響力を持っているだろう。 不動産相場は上昇に転じており、日本の金融不況は終息しているだろう。

第二段階は、
10年後に10兆円。そのとき、日本全国の主要な不動産は、投資信託が価格支配力を握っているだろう。不動産相場は安定した、緩やかな上昇軌道をたどっており、日本独自の土地本位の金融システムが威力を回復しているだろう。」

 5年後の時価総額5兆円と日本の金融不況の終息は達成された。10年後以降については、現在サブプライム問題もあり、今後に注目していきたい。
2008-07-28.MON
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