上昇 訪日客向け開発、地方波及 宿泊施設投資で差拡大
「爆買い」の減速など訪日旅行客の消費動向の変化を受け、宿泊ビジネスへの投資やホテル開発などが近年、東京から地方に波及している。だが、訪日客を呼び込む魅力や発信力がある地域と、ない地域の差は広がっており、地価の二極化の一因との見方もある。
品川駅の北約1キロに位置する東京都港区の泉岳寺地区。JR東日本が40年ぶりの山手線新駅開業を発表した2014年以降、ホテルが2施設オープンし、さらに2施設の建設が進む。17年分(1月1日時点)の近隣の路線価は14年分に比べ46・0%も上がった。15年度までの過去5年間に都内で営業許可を受けたホテルなどの宿泊施設の数は、港区や台東区、中央区で増加分が突出している。
国の統計によると、16年度に着工された全国のホテルなど宿泊施設は1568棟で、リーマン・ショック前の07年度(1384棟)を9年ぶりに上回った。最多は沖縄の262棟。北海道や東京、大阪、京都が100棟以上だ。逆に10棟以下も15県あった。
既存ホテルの売買や営業譲渡などの取引について、不動産専門の都市未来総合研究所(東京)が調べたところ、15年は約200件と前年の倍に増えた。うち約6割が3大都市圏以外で、沖縄や北海道、福岡など訪日客に人気が高いエリアで活発化していた。17年分の路線価の税務署別上昇率を見ても、トップは北海道倶知安町の「ニセコ高原比羅夫線通り」の77・1%。
同総合研の下向井邦博主任研究員は「魅力的な観光資源がある地域の宿泊施設に資金が集まり、地価も押し上げる流れは変わらないのではないか」と推測する。東急ステイは20年のホテル展開目標を「都内20施設」から「地方進出を含めた30施設」に引き上げた。高谷昌吾社長は「政令指令都市を中心に展開したい。ただ、大型客船や民泊の動向を慎重に見極める必要がある」と話す。
京国税局が1日公表した相続税や贈与税の課税基準となる2015年分の路線価は、県内約1万9000の標準宅地の平均で前年比0・3%上昇し、2年連続のプラスとなった。県内の最高値は「船橋市本町1の船橋駅前通り」で、1平方メートル当たり128万円。船橋や市川など県北西部が上昇する一方で、県庁所在地を抱える千葉市中心部はオフィス需要の減退などから、下落が続いている。